言語の習得のメカニズム 09/21/2011

人は、言語をどのように習得するのだろうか?

例えば、我々日本人が、英語を習得しようとする場合、不規則動詞があったり、冠詞があったり、現在完了形なんてものがあったりと、ほとほと嫌になってくる。そこで、6歳のアメリカ人の子供に聞きたくなる。「どうやって君は英語をマスターしたの」もちろん6歳の子供は、そんなことは、答えてくれない。でも彼らは、完璧に英語を使いこなしている。

子供の頭には、言語獲得装置がある

きっと、世界中の人たちが、外国語を習うときに、思うことではないだろうか。「赤ちゃんが覚えるように外国語を覚えられないだろうか?」と。

答えは、残念ながらNOです。

言語学者チョムスキー曰く、子供の脳の中には、「自動言語獲得装置がある」と。もちろん、頭の中にそんな機械が入っているわけではなく、脳の可塑化により、ある一定の年齢の間だけ、発揮する特殊能力ことだ。言語の習得能力は、出生と共に始まり、だいたい2歳半~6歳までに、そのピークを迎え、思春期を迎えるまでには、その能力を失ってしまう。
 言語能力のピークを迎えた子供は、2時間に1語づつのペースで、新しい言葉を憶える。 そして、難しい文型も、不規則な文法規則も、文脈から判断するような言葉も、文法の説明をしなくても、子供たちは完璧に憶えてしまう。何故か? チョムスキー曰く、「人は、言語を話す生物だからです。 言語の習得は、人にとって、いわば習性です。 アヒルが、だれに教わらなくても、水カキを掻いて水面を泳ぐように。」この幼少の頃に自然習得する言語を母語といいます。母語については、次回の説明に回し、今回は、もう少し言語の習得について焦点をあてたいと思います。

言語習得は、人間の習性

ここで、一つの実例を紹介したい。

今まで、言語はある一定の年齢に習得できる特殊能力という話しをしてきたが、その時期を失してしまうとどうなるのだろうか?一つの例に狼に育てられた子供が山の中で発見された例がある。発見当時、9歳。つまり、言語習得期の後に発見されたことになる。その後、8年ほど生存し、言語教育を行ったが、その間30語の単語しか憶えられず、文法的な会話は、できずに生涯を終えてしまった。この例でもわかるように、子供の言語の自然習得期をのがすと、言語の習得機能は、失ってしまう。
それでは、言語習得のお子さんの能力がどの位すごいかを、みてみましょう。

5歳、6歳の子供さんがよく500個以上もあるポケモンのキャラクターの名前を全部憶えたりする。 驚嘆すべき記憶力というか、言語能力だ。大人が、短期間に300個の英単語を覚えるといったら大変なことです。大人の場合、まず書くことから始め、何回も何回もの反復練習が必要となる。小さい子供たちは、どうもそんな練習をせずとも、いとも簡単にポケモンのキャラクターを憶えてしまう。一説には、大人の場合、言語をつかさどるのは左脳だが、小さい子供のうちは、左脳と右脳の両方を使って言語を習得するから、これだけの能力をもつのだといわれている。まさに言語力にかけては、子供の脳は、ツインターボようですね。

幼児の言語教育

そんな言語の天才である子供たちも弱点がある。大人ほど集中力が長時間続かないということ。厳密に言えば、興味が無いことには、集中力が続かない。ここが、幼児教育と年齢の上のお子さんとの教育の違うところです。幼児の場合、自分にとって興味がないこと、理由の無いことは憶えない。日本語を学習するという「理由付け」が大人とちょっと違う。高校生や大学生であれば、将来の夢、「こういう職業につきたい」、「日本の大学に留学する」等、日本語を勉強する為の理由付けができますが、幼児の場合それを望むことは無理がある。5歳や6歳のお子さんに、「なんでポケモンのキャラクターを憶えているの?」と聞いたら、「だってボケモンが、好きなんだもん」というシンプルな回答がくるでしょう。つまり、幼児の言語教育に必要なことは、子供への何故その言葉を話すか、という理由付けや興味の持たせ方が大切です。 また、次の機会に、言語への理由付け方についてもお話したいと思います。

 

引用文献:

酒井邦嘉著「言語の脳科学」

ステイーブン・ピンカー著 「言語をうみだす本能(上)(下)」

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